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2007年4月2日(月)12:25[ 絵画 ]

モーリス・ドニ クピドとプシュケ の物語 連作

kafka02.JPG


モーリス・ドニ クピドとプシュケの物語 1908年

第3のパネル「愛するクピドの秘密をのぞいたプシュケ」


ドニの作品はオルセー美術館展やモーリス・ドニ展でおなじみですね。松方幸次郎コレクションは、ドニの作品の多くを収集し、国立西洋美術館などで、ドニの作品を鑑賞する機会が多いと思います。モーリス・ドニの集団肖像画 「セザンヌ礼賛」も、よく知られるようになりました。

さて、この作品は、エルミタージュ国立美術館所蔵のものになります。この作品と、その連作、そして添えられた2枚の装飾パネルを、物語とともにご紹介しますね。

作品は、キューピッドのサイケ(サイキ)、あるいはアムールとプシュケの物語で、ご存知の方も多いでしょうね。愛(Cupid)と結ばれることを求める魂(Psyche)の寓話で、ドニ以外の画家も題材として描いていますが、ドニは、この作品を、オリジナルの連作に加えた2作品とともに7つのパネルがあります。

連作順にご紹介すべきでしたが、もっとも好きな第3のパネルを皆様と楽しみたいと思いまして。

さて、この場面。クピドは日が暮れると恋人プシュケに会いにきます。愛と美の女神アフロディーテの息子であるクピドは、姿をみることを禁じていましたが、プシュケは好奇心でとうとう見てしまった場面。愛の神のクピド(エロス)だったです。寝台のうえには三美神が飾られています。そしてプシュケの手には灯火。一滴の油がクピドの肩に・・・。

モーリス・ドニの色彩は、なんとも言い難い深みがあります。実際の作品に、もっとも近い風合いの画像です。

それでは、すこし画像が小さくなりますが、フルサイズをクリックしていただくと、大きくご覧いただけます。それでは第1から第7のパネルまでを楽しんでくださいな。

モーリス・ドニ クピドとプシュケの物語 7つの作品

the_story_of_cupid_and_psyche_098.jpg

左上から第1、第2パネル 左下から第4、第5パネル フルサイズはこちら


the_story_of_cupid_and_psyche_093.jpg

第6、第7パネル 1909年フルサイズはこちら

「美しきプシュケに矢を射ようとするクピド」
物語は、あまりの美しさで、母アフロディーテから憎まれているプシュケに恋するクピド。この娘が子孫を残さぬよう鉛の矢で撃つよう命じられたクピド。彼女を見るうちに、金の矢がクピド自身に刺さったのです。

「西風ゼフィロスにより至福の島へ運ばれるプシュケ」
第2パネルでは、そよぐ西風に運ばれて、至福の島にたどりつくプシュケ。そよぐ風は西風ゼフィロスです。ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生 」では左、春(ラ・プリマベーラ)では右に登場しています。春(ラ・プリマベーラ)には、クピドもいますよね。

「愛するクピドの秘密をのぞいたプシュケ」
第3パネルは、先にご紹介しましたので、第4パネルに。

「ヴィーナスの復讐 冥界の箱をあけ眠りに陥るプシュケ」
第4パネルでは、姿を見られたクピドが怒り、プシュケの前から消えてしまいます。再びクピドに会うため、試練を乗り越え、冥界のプロセルピナ(ペルセポネー)のもとから箱を持ち帰るのですが、開けてならないその箱を、またしても覗いてしまうプシュケ。そのため目覚めることがない、永遠の眠りに陥ります。そこへ傷の癒えたクピドが!

「クピドとプシュケの結婚祝い ジュピターの不老不死の贈り物」
第5パネルは、母アフロディーテの難題に従うプシュケを、傷に悩む床から助けることもあったクピド。アフロディーテの難題には、「羊の金毛」を持ってくるようにという命がありました。イアソンとメディアの物語にも登場する「羊の金毛」です。

一滴の油の傷が癒えた頃には、プシュケと離れていられないクピドでした。宮殿の窓が開いている隙に、飛び立つクピドは、黄泉の眠りにとりつかれ、すっかり眠りに陥ったプシュケを、助けます。

「おまえのいつもの好奇心が禍するのだ。母の言いつけを済ませておしまい。あとは私にまかせなさい。」−−−まるで、「パンドラ」みたいですね。

エロスは、ジュピター(ゼウス)に願いでて、母を説得してもらい、神々の集まる「天の広間」にて祝宴が開かれます。人間のプシュケに、不老不死の神の酒が渡されます。プシュケには美しい蝶の羽根が。プシュケには「蝶」という意があるのは、これが由来なんですね。こうして二人は結婚することになったのです。

さて、次の第6パネル、第7パネルは、オリジナルの5つのパネルに添えられた、イワン・モロゾフの蒐集のドニの「クピドとプシュケ の物語」。第6パネルは、西風ゼフィロスに運ばれる前の場面。

「山頂で決別するプシュケと両親」
第6パネルは、西風ゼフィロスに運ばれる前の場面。プシュケの両親が、クピドの思惑によって、「花嫁にはならぬ運命の娘を山の頂へ生贄として捧げよ」という信託を受けます。「私は、その運命に従いましょう」というプシュケと頂上で別れるシーン。そうして、第2パネルにある、西風ゼフィロスが、クピドのもとへ連れて行くのです。

「クピドとともに天昇するプシュケ」
第7パネルでは、「クピドとプシュケの物語」が、エロス(性愛、肉欲)とプシュケ(精神、理性)の哲学的寓意の作品であることが象徴されています。過ちと試練で浄化されたプシュケの精神の昇華の場面。二人には、喜びの意を持つウォルプタスが誕生します。

プラトンにとっては「哲学」が「エロス」であるとしていますが、プラトンの「饗宴」で、「死」を成就するための人の生涯に、子孫を残すことにより不死を手にします。

死について 13世紀以降のメメント・モリ
死の舞踏 アンリ・カザリスTotentanz 死の舞踏死の勝利 そして死の舞踏サン=サーンス 死の舞踏ジョバンニ・ボッカッチョ


神話のクピド(エロス)は美しき善きことに恋するのですが、プラトンは、だからこそエロスに、もっとも欠けているものだといいます。肉体美から精神美と高まっていくその先に、喜び驚嘆する美、つまり「美のイデア」を捉えることなのです。

神話 クピドとプシュケは、美のイデアに到達する物語ともいえるでしょう。

モーリス・ドニ関連記事 XAI
*ピエタ
*受胎告知
*セザンヌ礼賛
作品中に描かれているセザンヌの「果物鉢のある静物」にリンク、ドニの模写、勘違いしていたセザンヌの作品などの画像が追加となっています。
*エマオの晩餐
*バッカス祭
*塔の花嫁 ペレアスとメリザンドから
*ドニ ポートレート/アムール リトグラフ/他リトグラフ
*永遠なる春/六月の春
*庭園を行く少女たち
*モーリス・ドニ 天国
*無題 水彩リトグラフ/春景色
*ゴーギャンの黄色いキリスト ドニの黄色いキリスト
*モーリス・ドニ クピドとプシュケの物語 七つの作品
*習作 春の森/"Trestrignel"海岸の浜辺/緑の木/オルフェスとエウリュディケ(エウリディーチェ)
*ピロウとシンボルウス、デペシュトワ − トゥールーズ、エンジェル、マダム・ランソンと猫、春の森林、イースター・ミステリー→http://magnummasse.blogtribe.org/

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コメント
おそらく初めて見たドニ作品です。
私の中のドニの印象とまったく異なる作品です。ドニとこの題材が私の中で結びつきません。作品自体は良く見ると、ドニらしい様子はアチラコチラに見られますが、知らずに見た時にドニだと分かるかな?
愛すべきと形容したいような作品群ですね。
Posted by とーし  削除  at 2007/04/02(月) 19:08
とーしさん、こんにちは。

>私の中のドニの印象

私のドニの印象、とーしさんのドニの印象、そしてほかの方のドニの印象って、それぞれ違うのかもしれませんね。

Magnum masseで掲載している「イースター・ミステリー」なんかと、XAIで掲載している「塔の花嫁」は、色彩のトーンの違いで、印象が違いますよね。

ロートレック、ゴーギャンのような作風を描くこともでき、ブリューゲルのような作風もありますよね。

このプシュケや受胎告知などは、逆に、他の画家では描かない作風の仕上げだと思います。それが、視覚的に「ドニ」と認知できるものなのでしょうね。

ドニ自身、非常にたくさんの表現方法で描いていますが、共通するのは「色」をどのように扱っているかですね。陰影に、色の対比を用いたりしているところがすごく面白い。

色彩検定なんかのお勉強をしている方は、背景の違いで、同じ色が鮮やかに見えたり、鈍く見えたりする色の性質などを、彼の作品から確認することができるでしょうね。

そして、私のこのブログの背景色ですが、違う背景色のブログだと、この作品の印象も変わるのかもしれませんね!
Posted by kafka  削除  at 2007/04/11(水) 09:16
ルネサンスの時代には、ギリシャ神話が東ローマないしイスラム圏から伝わったようですが、ボッティチェリはギリシャ神話を知っていたのでしょうか。
Posted by 石山みずか  削除  at 2009/01/13(火) 22:56
石山さま
ながらくご返信していないご無礼をお許しください。

>ボッティチェリはギリシャ神話を知っていたのでしょうか

どうなんでしょうね!でも宗教やダンテにもくわしいボッティチェリなので、ギリシャ神話やヘロドトスの書いた「歴史」なども知識があったのではないでしょうか?

石山さんはどう思いますか?今度、ボッティチェリの記事もこちらでご用意します。

ちなみにモーリス・ドニはお好きですか?ぜひコメントをお待ちしております。
Posted by KAFKA    at 2009/12/25(金) 19:26
AaAaアァあぁ漢字





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