モーリス・ドニ クピドとプシュケの物語 1908年
第3のパネル「愛するクピドの秘密をのぞいたプシュケ」
ドニの作品はオルセー美術館展やモーリス・ドニ展でおなじみですね。松方幸次郎コレクションは、ドニの作品の多くを収集し、国立西洋美術館などで、ドニの作品を鑑賞する機会が多いと思います。
モーリス・ドニの集団肖像画 「セザンヌ礼賛」も、よく知られるようになりました。
さて、この作品は、エルミタージュ国立美術館所蔵のものになります。この作品と、その連作、そして添えられた2枚の装飾パネルを、物語とともにご紹介しますね。
作品は、キューピッドのサイケ(サイキ)、あるいはアムールとプシュケの物語で、ご存知の方も多いでしょうね。愛(Cupid)と結ばれることを求める魂(Psyche)の寓話で、ドニ以外の画家も題材として描いていますが、ドニは、この作品を、オリジナルの連作に加えた2作品とともに7つのパネルがあります。
連作順にご紹介すべきでしたが、もっとも好きな第3のパネルを皆様と楽しみたいと思いまして。
さて、この場面。クピドは日が暮れると恋人プシュケに会いにきます。愛と美の女神アフロディーテの息子であるクピドは、姿をみることを禁じていましたが、プシュケは好奇心でとうとう見てしまった場面。愛の神のクピド(エロス)だったです。寝台のうえには三美神が飾られています。そしてプシュケの手には灯火。一滴の油がクピドの肩に・・・。
モーリス・ドニの色彩は、なんとも言い難い深みがあります。実際の作品に、もっとも近い風合いの画像です。
それでは、すこし画像が小さくなりますが、フルサイズをクリックしていただくと、大きくご覧いただけます。それでは第1から第7のパネルまでを楽しんでくださいな。
モーリス・ドニ クピドとプシュケの物語 7つの作品
「美しきプシュケに矢を射ようとするクピド」
物語は、あまりの美しさで、母アフロディーテから憎まれているプシュケに恋するクピド。この娘が子孫を残さぬよう鉛の矢で撃つよう命じられたクピド。彼女を見るうちに、金の矢がクピド自身に刺さったのです。
「西風ゼフィロスにより至福の島へ運ばれるプシュケ」
第2パネルでは、そよぐ西風に運ばれて、至福の島にたどりつくプシュケ。そよぐ風は西風ゼフィロスです。
ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生 」では左、春(ラ・プリマベーラ)では右に登場しています。春(ラ・プリマベーラ)には、クピドもいますよね。
「愛するクピドの秘密をのぞいたプシュケ」
第3パネルは、先にご紹介しましたので、第4パネルに。
「ヴィーナスの復讐 冥界の箱をあけ眠りに陥るプシュケ」
第4パネルでは、姿を見られたクピドが怒り、プシュケの前から消えてしまいます。再びクピドに会うため、試練を乗り越え、冥界のプロセルピナ(ペルセポネー)のもとから箱を持ち帰るのですが、開けてならないその箱を、またしても覗いてしまうプシュケ。そのため目覚めることがない、永遠の眠りに陥ります。そこへ傷の癒えたクピドが!
「クピドとプシュケの結婚祝い ジュピターの不老不死の贈り物」
第5パネルは、母アフロディーテの難題に従うプシュケを、傷に悩む床から助けることもあったクピド。アフロディーテの難題には、「羊の金毛」を持ってくるようにという命がありました。
イアソンとメディアの物語にも登場する「羊の金毛」です。
一滴の油の傷が癒えた頃には、プシュケと離れていられないクピドでした。宮殿の窓が開いている隙に、飛び立つクピドは、黄泉の眠りにとりつかれ、すっかり眠りに陥ったプシュケを、助けます。
「おまえのいつもの好奇心が禍するのだ。母の言いつけを済ませておしまい。あとは私にまかせなさい。」−−−まるで、「
パンドラ」みたいですね。
エロスは、
ジュピター(ゼウス)に願いでて、母を説得してもらい、神々の集まる「天の広間」にて祝宴が開かれます。人間のプシュケに、不老不死の神の酒が渡されます。プシュケには美しい蝶の羽根が。プシュケには「蝶」という意があるのは、これが由来なんですね。こうして二人は結婚することになったのです。
さて、次の第6パネル、第7パネルは、オリジナルの5つのパネルに添えられた、イワン・モロゾフの蒐集のドニの「クピドとプシュケ の物語」。第6パネルは、西風ゼフィロスに運ばれる前の場面。
「山頂で決別するプシュケと両親」
第6パネルは、西風ゼフィロスに運ばれる前の場面。プシュケの両親が、クピドの思惑によって、「花嫁にはならぬ運命の娘を山の頂へ生贄として捧げよ」という信託を受けます。「私は、その運命に従いましょう」というプシュケと頂上で別れるシーン。そうして、第2パネルにある、西風ゼフィロスが、クピドのもとへ連れて行くのです。
「クピドとともに天昇するプシュケ」
第7パネルでは、「クピドとプシュケの物語」が、エロス(性愛、肉欲)とプシュケ(精神、理性)の哲学的寓意の作品であることが象徴されています。過ちと試練で浄化されたプシュケの精神の昇華の場面。二人には、喜びの意を持つウォルプタスが誕生します。
プラトンにとっては「哲学」が「エロス」であるとしていますが、プラトンの「饗宴」で、「死」を成就するための人の生涯に、子孫を残すことにより不死を手にします。
死について 13世紀以降のメメント・モリ
死の舞踏 アンリ・カザリス/Totentanz 死の舞踏/死の勝利 そして死の舞踏/サン=サーンス 死の舞踏/ジョバンニ・ボッカッチョ
神話のクピド(エロス)は美しき善きことに恋するのですが、プラトンは、だからこそエロスに、もっとも欠けているものだといいます。肉体美から精神美と高まっていくその先に、喜び驚嘆する美、つまり「美のイデア」を捉えることなのです。
神話 クピドとプシュケは、美のイデアに到達する物語ともいえるでしょう。
モーリス・ドニ関連記事
「XAI」
*ピエタ
*受胎告知
*セザンヌ礼賛
作品中に描かれているセザンヌの「果物鉢のある静物」にリンク、ドニの模写、勘違いしていたセザンヌの作品などの画像が追加となっています。
*エマオの晩餐
*バッカス祭
*塔の花嫁 ペレアスとメリザンドから
*ドニ ポートレート/アムール リトグラフ/他リトグラフ
*永遠なる春/六月の春
*庭園を行く少女たち
*モーリス・ドニ 天国
*無題 水彩リトグラフ/春景色
*ゴーギャンの黄色いキリスト ドニの黄色いキリスト
*モーリス・ドニ クピドとプシュケの物語 七つの作品
*習作 春の森/"Trestrignel"海岸の浜辺/緑の木/オルフェスとエウリュディケ(エウリディーチェ)
*ピロウとシンボルウス、デペシュトワ − トゥールーズ、エンジェル、マダム・ランソンと猫、春の森林、イースター・ミステリー→http://magnummasse.blogtribe.org/